手を取りて引けば、振釈《ふりほど》き、
「ええ、もう貴方は」
「お※[#「※」は「勞/心」、379−9]《うるさ》いでせう」
「勿論《もちろん》」
「私|向後《これから》もつと、もつともつと※[#「※」は「勞/心」、379−11]くして上げるのです。さあ、貴方、今何と有仰《おつしや》つたので御座います、浅膚《あさはか》な邪推ですつて? 貴方こそも少し気を着けてお口をお利《き》き遊ばせな、貴方も男子でゐらつしやるなら、何為《なぜ》立派に、その通だ。情婦《をんな》が有るのがどうしたと、かう打付《ぶつつ》けて有仰らんのです。間さん、私貴方に向つてそんな事をかれこれ申す権利は無い女なので御座いますよ。幾多《いくら》さう云ふ権利を有ちたくても、有つ事が出来ずにゐるので御座います。それに、何も私の前を憚《はばか》つて、さう向《むき》に成つてお隠し遊ばすには当らんでは御座いませんか。
 私実を申しませうか、箇様《かよう》なので御座います。貴方が余所外《よそほか》に未だ何百人愛してゐらつしやる方《かた》が有りませうとも、それで愛相《あいそ》を尽《つか》して、貴方の事を思切るやうな、私そんな浮気な
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