ねたる声を励す貫一、
「貴方は何を為るのですか! 好い加減になさい」
「…………」
「さうして早くお帰りなさい」
「帰りません!」
「帰らん? 帰らんけりや宜《よろし》い。もう明日《あす》からは貴方のここへ足蹈《あしぶみ》の出来んやうに為て了《しま》ふから、さうお思ひなさい」
「私死んでも参ります!」
「今まで我慢をしてゐたですけれど、もう抛《はふ》つて置かれんから、私は赤樫さんに会つて、貴方の事をすつかり話して了ひます」
満枝は始て涙に沾《うるほ》へる目を挙げたり。
「はあ、お話し下さい」
「…………」
「赤樫に聞えましたら、どう致すので御座います」
貫一は歯を鳴して急上《せきあ》げたり。
「貴方は……実に……驚入《おどろきい》つた根性ですな! 赤樫は貴方の何ですか」
「間さん、貴方は又赤樫を私の何だと思召してゐらつしやるのですか」
「怪《けし》からん!」
彼は憎き女の頬桁《ほほげた》をば撃つて撃つて打割《うちわ》る能《あた》はざるを憾《うらみ》と為《す》なるべし。
「定《さだめ》てあれは私の夫だと思召すので御座いませうが、決《け》してさやうでは御座いませんです」
「そんなら何
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