つ》から申せば、無理なお願かも知れませんけれど、私は又私で別に考へるところが有つて、決《け》して貴方の有仰《おつしや》るやうな道に外《はづ》れた事とは思ひませんのです。よしんばさうでありましても、こればかりは外の事とは別で、お互にかうと思つた日には、其処《そこ》に理窟も何も有るのでは御座いません。究竟《つまり》貴方がそれを口実にして遁《に》げてゐらつしやるのは、始から解り切つてゐるので。然し、貴方も人から偏屈だとか、一国だとか謂れてゐらつしやるのですから、成程|儀剛《ぎごは》な片意地なところもお有《あん》なすつて、色恋の事なんぞには貪着《とんちやく》を遊ばさん方で、それで私の心も汲分けては下さらんのかと、さうも又思つたり致して、実は貴方の頑固《がんこ》なのを私|歯痒《はがゆ》いやうに存じてをつたので御座います……ところが!」
と言ひも敢《あ》へず煙管《きせる》を取りて、彼は貫一の横膝《よこひざ》をば或る念力《ねんりき》強く痛《したた》か推したり。
「何を作《なさ》るのです!」
払へば取直すその煙管にて、手とも云はず、膝とも云はず、当るを幸《さいはひ》に満枝は又打ち被《かか》る。
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