から変に成つたので御座いますよ。お宅に詣《あが》つて気が違つたのですから、元の正気に復《なほ》してお還し下さいまし」
 彼は擦寄《すりよ》り、擦寄りて貫一の身近に逼《せま》れり。浅ましく心苦《こころくるし》かりけれど迯《に》ぐべくもあらねば、臭き物に鼻を掩《おほ》へる心地しつつ、貫一は身を側《そば》め側め居たり。満枝は猶《なほ》も寄添はまほしき風情《ふぜい》にて、
「就きましては、私|一言《いちごん》貴方に伺ひたい事が有るので御座いますが、これはどうぞ御遠慮無く貴方の思召す通を丁《ちやん》と有仰《おつしや》つてお聞せ下さいまし、宜《よろし》う御座いますか」
「何ですか」
「なんですかでは可厭《いや》です、宜《よろし》いと截然《きつぱり》有仰《おつしや》つて下さい。さあ、さあ、貴方」
「けれども……」
「けれどもぢや御座いません。私の申す事だと、貴方は毎《いつ》も気の無い返事ばかり遊ばすのですけれど、何も御迷惑に成る事では御座いませんのです、私の申す事に就て貴方が思召す通を答へて下されば、それで宜《よろし》いのですから」
「勿論《もちろん》答へます。それは当然《あたりまへ》の事ぢやないで
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