を。
「どうですか、なあ」
「さう云ふ者を対手《あひて》に遊ばすと、別《べつ》してお楽《たのしみ》が深いとか申しますが、その代《かはり》に罪も深いので御座いますよ。貴方が今日《こんにち》まで巧《たくみ》に隠し抜いてゐらしつた訳も、それで私能く解りました。こればかりは余り公《おほやけ》に御自慢は出来ん事で御座いますもの、秘密に遊ばしますのは実に御尤《ごもつとも》で御座います。
 その大事の秘密を、人も有らうに、貴方の嫌《きら》ひの嫌ひの大御嫌《だいおきら》ひの私に知られたのは、どんなにかお心苦《こころくるし》くゐらつしやいませう。私十分お察し申してをります。然し私に取りましては、これ程|幸《さいはひ》な事は無いので御座います。貴方が余り片意地に他《ひと》を苦めてばかりゐらしつたから、今度は私から思ふ様これで苦めて上げるのです。さう思召《おぼしめ》してゐらつしやい!」
 聞訖《ききをは》りたる貫一は吃々《きつきつ》として窃笑《せつしよう》せり。
「貴方は気でも違ひは為《せ》んですか」
「少しは違つてもをりませう。誰がこんな気違《きちがひ》には作《な》すつたのです。私気が違つてゐるなら、今朝
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