》に忍ばずやと、風の音にも幾度《いくたび》か頭《かしら》を挙げし貫一は、婆娑《ばさ》として障子に揺《ゆ》るる竹の影を疑へり。
 宮は何時《いつ》までここに在らん、我は例の孤《ひとり》なり。思ふに、彼の悔いたるとは誠ならん、我の死を以《も》て容《ゆる》さざるも誠なり。彼は悔いたり、我より容さば容さるべきを、さは容さずして堅く隔つる思も、又|怪《あやし》きまでに貫一は佗《わびし》くて、その釈《と》き難き怨《うらみ》に加ふるに、或種の哀《あはれ》に似たる者有るを感ずるなりき。いと淡き今宵の月の色こそ、その哀にも似たるやうに打眺《うちなが》めて、他《ひと》の憎しとよりは転《うた》た自《みづから》を悲しと思続けぬ。彼は竟《つひ》に堪へかねたる気色《けしき》にて障子を推啓《おしあく》れば、涼《すずし》き空に懸れる片割月《かたわれづき》は真向《まむき》に彼の面《おもて》に照りて、彼の愁ふる眼《まなこ》は又|痛《したた》かにその光を望めり。
「間さん」
 居たるを忘れし人の可疎《うとまし》き声に見返れば、はや背後《うしろ》に坐れる満枝の、常は人を見るに必ず笑《ゑみ》を帯びざる無き目の秋波《しほ》も乾《
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