出《ひきいだ》せしかと、今更に差《たが》はざりし父が言《ことば》を思ひて、宮は仇《あだ》の為に病めるを笞《むちう》たるるやうにも覚ゆるなり。いよいよ長く居るべきにあらぬ今日のこの場はこれまでと潔く座を起たんとしたりけれど、何処《いづく》にか潜めゐる彼人《かのひと》の吾が還るを待ちて忽《たちま》ち出で来て、この者と手を把《と》り、面《おもて》を並べて、可哀《あはれ》なる吾をば笑ひ罵《ののし》りもやせんと想へば、得堪《えた》へず口惜《くちをし》くて、如何《いか》にせば可《よ》きと心苦《こころくるし》く遅《ためら》ひゐたり。
「お久しぶりで折角お出《いで》のところを、生憎《あいにく》と余義無い用向の使が見えましたもので、お出掛になつたので御座いますが、些《ちよつ》と遠方でございますから、お帰来《かへり》の程は夜にお成りで御座いませう、近日どうぞ又|御寛《ごゆつく》りとお出《い》で遊ばしまして」
「大相|長座《ちようざ》を致しまして、貴方の御用のお有り遊ばしたところを、心無いお邪魔を致しまして、相済みませんで御座いました」
「いいえ、もう、私共は始終上つてをるので御座いますから、些《ちよつ》と
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