より美く、己より可憐《しをらし》く、己より貴《たつと》きを見たる妬《ねた》さ、憎さは、唯この者有りて可怜《いと》しさ故に、他《ひと》の情《なさけ》も誠も彼は打忘るるよとあはれ、一念の力を剣《つるぎ》とも成して、この場を去らず刺殺《さしころ》さまほしう、心は躍《をど》り襲《かか》り、躍り襲らんと為るなりけり。
宮は稍羞《ややはぢら》ひて、葉隠《はがくれ》に咲遅れたる花の如く、夕月の涼《すずし》う棟《むね》を離れたるやうに満枝は彼の前に進出《すすみい》でて、互に対面の礼せし後、
「始めましてお目に掛りますで御座いますが、間様の……御親戚? でゐらつしやいますで御座いますか」
憎き人をば一番苦めんの満枝が底意なり。
「はい親類筋の者で御座いまして」
「おや、さやうでゐらつしやいますか。手前は赤樫満枝と申しまして、間様とは年来の御懇意で、もう御親戚同様に御交際を致して、毎々お世話になつたり、又及ばずながらお世話も致したり、始終お心易く致してをりますで御座いますが、ついぞ、まあ従来《これまで》お見上げ申しませんで御座いました」
「はい、つい先日まで長らく遠方に参つてをりましたもので御座います
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