ね。一体まあどうなすつたと云ふので御座いませう、那裡《あちら》にも這裡《こちら》にもお客様を置去《おきざり》に作《なす》つてからに。はてね、まあ、どうもお出掛になる訳は無いので御座いますけれど、家中には何処《どつこ》にもゐらつしやらないところを見ますと、お出掛になつたので御座いますかしらん。それにしても……まあ御免あそばしまして」
 彼は又満枝の許《もと》に急ぎ行きて、事の由《よし》を告げぬ。
「いいえ、貴方《あなた》、私は見て参りましたので御座いますよ。子亭《はなれ》にゐらつしやりは致しません、それは大丈夫で御座います」
 彼は遽《にはか》に心着きて履物《はきもの》を検《あらた》め来んとて起ちけるに、踵《つ》いで起てる満枝の庭前《にはさき》の縁に出づると見れば、※[#「※」は「にんべん+從」、361−2]々《つかつか》と行きて子亭《はなれ》の入口に顕《あらは》れたり。
 宮は何人《なにびと》の何の為に入来《いりきた》れるとも知らず、先《ま》づ愕《おどろ》きつつも彼を迎へて容《かたち》を改めぬ。吾が恋人の恋人を拝まんとてここに来にける満枝の、意外にも敵の己《おのれ》より少《わか》く、己
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