いか。ことの破れて了《しま》つた今日《こんにち》になつて悔悟も赦してくれも要《い》つたものか、無益な事だ! 少《すこし》も汚《けが》れん宮であるから愛してをつたのだ、それを貴様は汚して了つたから怨んだのだ。さうして一遍汚れた以上は、それに対する十倍の徳を行《おこな》つても、その汚れたのを汚れざる者に改めることは到底出来んのだ。
であるから何と言つた! 熱海で別れる時も、お前の外《ほか》に妻と思ふ者は無い、一命に換へてもこの縁は切られんから、俺《おれ》のこの胸の中を可憐《あはれ》と思つて、十分決心してくれ、と実に男を捨てて頼んだではないか。その貫一に負《そむ》いて……何の面目《めんぼく》有つて今更悔悟……晩《おそ》い!」
彼はその文を再三柱に鞭《むちう》ちて、終に繩《なは》の如く引捩《ひきねぢ》りぬ。
打続きて宮が音信《たより》の必ず一週に一通来ずと謂ふこと無くて、披《ひらか》れざるに送り、送らるるに披《ひらか》かざりしも、はや算《かぞ》ふれば十通に上《のぼ》れり。さすがに今は貫一が見る度《たび》の憤《いかり》も弱りて、待つとにはあらねど、その定りて来る文の繁《しげ》きに、自《おの
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