よたび》の文をも例の灰と棄てて顧ざりしに、日を経《ふ》ると思ふ程も無く、五度《いつたび》の文は来にけり。よし送り送りて千束《ちつか》にも余れ、手に取るからの烟《けむ》ぞと侮《あなど》れる貫一も、曾《かつ》て宮には無かりし執着のかばかりなるを謂知《いひし》らず異《あやし》みつつ、今日のみは直《すぐ》にも焚《や》かざりしその文を、一度《ひとたび》は披《ひら》き見んと為たり。
「然し……」
 彼は輙《たやす》く手を下さざりき。
「赦《ゆる》してくれと謂ふのだらう。その外には、見なければ成らん用事の有る訳は無い。若《も》し有ると為れば、それは見る可からざる用事なのだ。赦してくれなら赦して遣《や》る、又赦さんでも既に赦れてゐるのではないか。悔悟したなら、悔悟したで、それで可い。悔悟したから、赦したからと云つて、それがどうなるのだ。それが今日《こんにち》の貫一と宮との間に如何《いか》なる影響を与へるのだ。悔悟したからあれの操《みさを》の疵《きず》が愈《い》えて、又赦したから、富山の事が無い昔に成るのか。その点に於《おい》ては、貫一は飽くまでも十年前の貫一だ。宮! 貴様は一生|汚《けが》れた宮ではな
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