《よ》りて始て償はるべきか、或《あるひ》はその富を獲んとする貪欲《どんよく》はこの恨を移すに足るか。
彼は苦《くるし》き息《いき》を嘘《ふ》きぬ。
吾恋を壊《やぶ》りし唯継! 彼等の恋を壊らんと為《せ》しは誰《た》そ、その吾の今千葉に赴《おもむ》くも、又或は壊り、或は壊らんと為るにあらざる無きか。しかもその貪欲は吾に何をか与へんとすらん。富か、富は吾が狂疾を医《い》すべき特効剤なりや。かの妨げられし恋は、破鏡の再び合ふを得て楽み、吾が割《さか》れし愛は落花の復《かへ》る無くして畢《をは》らんのみ! いで、吾はかくて空く埋《うづも》るべきか、風に因《よ》りて飛ぶべきか、水に落ちて流るべきか。
貫一は船橋を過《すぐ》る燈《ともしび》暗き汽車の中《うち》に在り。
第 六 章
千葉より帰りて五日の後 M., Shigis――の書信《ふみ》は又|来《きた》りぬ。貫一は例に因《よ》りて封のまま火中してけり。その筆の跡を見れば、忽《たちま》ち浮ぶその人の面影《おもかげ》は、唯継と並び立てる梅園の密会にあらざる無きに、彼は殆《ほとん》ど当時に同《おなじ》き憤《いかり》を発して、先
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