……悔し……悔《くやし》いとは思つてゐても、それで雅さんの躯に疵が附いたから、一処になるのは迷惑だなんと何時《いつ》私が思つて! 雅さん、私はそんな女ぢやありません、そんな女ぢや……ない!」
 この心を知らずや、と情極《じようきはま》りて彼の悶《もだ》え慨《なげ》くが手に取る如き隣には、貫一が内俯《うつぷし》に頭《かしら》を擦付《すりつ》けて、巻莨《まきたばこ》の消えしを※[#「※」は「敬/手」、340−12]《ささ》げたるままに横《よこた》はれるなり。
「雅さんは私をそんな女だとお思ひのは、貴方がお留守中の私の事を御存じないからですよ。私は三月《みつき》の余《よ》も疾《わづら》つて……そんな事も雅さんは知つてお在《いで》ぢやないのでせう。それは、阿父《おとつ》さんや阿母《おつか》さんは雅さんのところへ上げる気は無いにしても、私は私の了簡で、若しああ云ふ事が有つたので雅さんの肩身が狭くなるやうなら、私は猶更雅さんのところへ適《ゆ》かずにはゐられない。さうして私も雅さんと一処に肩身が狭くなりたいのですから。さうでなけりや、子供の内からあんなに可愛《かはい》がつて下すつた雅さんの尊母《おつ
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