。その頃向坂の手から何したので御座います。究竟《つまり》あの方もその件から論旨免官のやうな事にお成なすつて、又東京へお還りにならなければ為方が無いので、彼方《あちら》を引払ふのに就いて、向坂から話が御座いまして、宅の方へ始は委任して参つたので御座いましたけれど、丁度去年の秋頃から全然《すつかり》此方《こちら》へ引継いで了ふやうな都合に致しましたの。
 然し、それは取立に骨が折れるので御座いましてね、ああして止《とん》と遊んでお在《いで》も同様で、飜訳《ほんやく》か何か少《すこし》ばかり為さる御様子なのですから、今のところではどうにも手の着けやうが無いので御座いますわ」
「はあ成程。然し、あれが何で三千円と云ふ金を借りたかしらん」
「それはあの方は連帯者なので御座います」
「はあ! さうして借主は何者ですか」
「大館朔郎《おおだちさくろう》と云ふ岐阜の民主党員で、選挙に失敗したものですから、その運動費の後肚《あとばら》だとか云ふ話でございました」
「うむ、如何《いか》にも! 大館朔郎……それぢや事実でせう」
「御承知でゐらつしやいますか」
「それは荒尾に学資を給した人で、あれが始終恩人と
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