ふか解らないのね。かうしてゐれば、可楽《たのしみ》な事もある代《かはり》に辛《つら》い事や、悲い事や、苦《くるし》い事なんぞが有つて、二つ好い事は無し、考れば考るほど私は世の中が心細いわ。不図《ふつと》さう思出《おもひだ》したら、毎日そんな事ばかり考へて、可厭《いや》な心地《こころもち》になつて、自分でもどうか為《し》たのかしらんと思ふけれど、私病気のやうに見えて?」
 目を閉ぢて聴《きき》ゐし貫一は徐《しづか》に※[#「※」は「目+匡」、36−5]《まぶた》を開くとともに眉《まゆ》を顰《ひそ》めて、
「それは病気だ!」
 宮は打萎《うちしを》れて頭《かしら》を垂れぬ。
「然《しか》し心配する事は無いさ。気に為ては可かんよ。可いかい」
「ええ、心配しはしません」
 異《あやし》く沈みたるその声の寂しさを、如何《いか》に貫一は聴きたりしぞ。
「それは病気の所為《せゐ》だ、脳でも不良《わるい》のだよ。そんな事を考へた日には、一日だつて笑つて暮せる日は有りはしない。固《もと》より世の中と云ふものはさう面白い義《わけ》のものぢやないので、又人の身の上ほど解らないものは無い。それはそれに違無いの
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