はなほ頭を掉れば、
「ぢやどうしたと云ふのさ」
宮は唯胸の中《うち》を車輪《くるま》などの廻《めぐ》るやうに覚ゆるのみにて、誠にも詐《いつはり》にも言《ことば》を出《いだ》すべき術《すべ》を知らざりき。彼は犯せる罪の終《つひ》に秘《つつ》む能《あた》はざるを悟れる如き恐怖《おそれ》の為に心慄《こころをのの》けるなり。如何《いか》に答へんとさへ惑へるに、傍《かたはら》には貫一の益|詰《なじ》らんと待つよと思へば、身は搾《しぼ》らるるやうに迫来《せまりく》る息の隙《ひま》を、得も謂《い》はれず冷《ひやや》かなる汗の流れ流れぬ。
「それぢやどうしたのだと言ふのに」
貫一の声音《こわね》は漸《やうや》く苛立《いらだ》ちぬ。彼の得言はぬを怪しと思へばなり。宮は驚きて不覚《そぞろ》に言出《いひいだ》せり。
「どうしたのだか私にも解らないけれど、……私はこの二三日どうしたのだか……変に色々な事を考へて、何だか世の中がつまらなくなつて、唯悲くなつて来るのよ」
呆《あき》れたる貫一は瞬《またたき》もせで耳を傾《かたぶ》けぬ。
「人間と云ふものは今日かうして生きてゐても、何時《いつ》死んで了《しま》
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