せしも灰となり、反古《ほご》となりて、彼の帯揚に籠《こ》められては、いつまで草の可哀《あはれ》や用らるる果も知らず、宮が手習は実《げ》に久《ひさし》うなりぬ。
些箇《かごと》に慰められて過せる身の荒尾に邂逅《めぐりあ》ひし嬉しさは、何に似たりと謂《い》はんも愚《おろか》にて、この人をこそ仲立ちて、積る思を遂《と》げんと頼みしを、仇《あだ》の如く与《くみ》せられざりし悲しさに、さらでも切なき宮が胸は掻乱《かきみだ》れて、今は漸《やうや》く危きを懼《おそ》れざる覚悟も出《い》で来て、いつまで草のいつまでかくてあらんや、文は送らんと、この日頃思ひ立ちてけり。
紙の良きを択《えら》び、筆の良きを択び、墨の良きを択び、彼は意《こころ》してその字の良きを殊《こと》に択びて、今日の今ぞ始めて仮初《かりそめ》ならず写さんと為《す》なる。打顫《うちふる》ふ手に十行|余《あまり》認《したた》めしを、つと裂きて火鉢に差※[#「※」は「くさかんむり+熱」、313−16]《さしく》べければ、焔《ほのほ》の急に炎々と騰《のぼ》るを、可踈《うとま》しと眺めたる折しも、紙門《ふすま》を啓《あ》けてその光に惧《おび
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