で……いや、いや、そりや言《いは》れん。言うて善い事なら言ひます、人に対して言ふべき事でない、况《いはん》や誨ふべき事ではない、止《た》だ僕一箇の了簡として肚《はら》の中に思うたまでの事、究竟《つまり》荒尾的空想に過ぎんのぢやから、空想を誨へて人を誤つてはどうもならんから、僕は何も言はんので、言はんぢやない、実際言得んのじや、然し猶能《なほよ》う考へて見て、貴方に誨へらるる方法を見出《みいだ》したら、更にお目に掛つて申上げやう。折が有つたら又お目に掛ります。は、僕の居住《すまひ》? 居住は、まあ言はん方が可い、蜑《あま》が子《こ》なれば宿も定めずじや。言うても差支《さしつかへ》は無いけれど、貴方に押掛けらるると困るから、まあ言はん。は、如何《いか》にも、こんな態《なり》をしてをるので、貴方は吃驚《びつくり》なすつたか、さうでせう。自分にも驚いてをるのぢやけれどどうも為方が無い。僕の身の上に就ては段々子細が有るですとも、それもお話したいけれど、又この次に。
 酒は余り飲むな? はあ、今日のやうに酔うた事は希《まれ》です。忝《かたじけな》い、折角の御忠告ぢやから今後は宜《よろし》い、気を着
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