しを》れたる宮と熊の敷皮を斜《ななめ》に差向ひたり。こはこれ、彼の識《し》れると謂《い》ひし医師の奥二階にて、畳敷にしたる西洋造の十畳間なり。物語ははや緒《いとぐち》を解きしなるべし。
「間《はざま》が影を隠す時、僕に遺《のこ》した手紙が有る、それで悉《くはし》い様子を知つてをるです。その手紙を見た時には、僕も顫《ふる》へて腹が立つた。直《すぐ》に貴方《あなた》に会うて、是非これは思返すやうに飽くまで忠告して、それで聴かずば、もう人間の取扱は為ちやをられん、腹の癒《い》ゆるほど打※[#「※」は「足+(殕−歹)」、295−1]《うちのめ》して、一生結婚の成らんやう立派な不具《かたは》にしてくれやう、と既にその時は立上つたですよ。然し、間が言《ことば》を尽しても貴方が聴かんと云ふ、僕の言《ことば》を容《い》れやう道理が無い。又間を嫌《きら》うた以上は、貴方は富山への売物じや。他《ひと》の売物に疵《きず》を附けちや済まん、とさう思うて、そりや実に矢も楯《たて》も耐《たま》らん胸を※[#「※」は「沙/手」、295−4]《さす》つて了《しま》うたんです」
 宮が顔を推当《おしあ》てたる片袖《かた
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