ゑ》ひ、流車を駆りて富に驕《おご》れる高下《こうげ》の差別《しやべつ》の自《おのづか》ら種《しゆ》有りて作《な》せるに似たる如此《かくのごと》きを、彼等は更に更に夢《ゆめみ》ざりしなり。その算《かぞ》へざりし奇遇と夢《ゆめみ》ざりし差別《しやべつ》とは、咄々《とつとつ》、相携へて二人の身上《しんじよう》に逼《せま》れるなり。女気《をんなぎ》の脆《もろ》き涙ははや宮の目に湿《うるほ》ひぬ。
「まあ大相お変り遊ばしたこと!」
「貴方《あなた》も変りましたな!」
 さしも見えざりし面《おもて》の傷の可恐《おそろし》きまでに益《ますま》す血を出《いだ》すに、宮は持たりしハンカチイフを与へて拭《ぬぐ》はしめつつ、心も心ならず様子を窺《うかが》ひて、
「お痛みあそばすでせう。少しお待ちあそばしまし」
 彼は何やらん吩咐《いひつ》けて車夫を遣りぬ。
「直《ぢき》この近くに懇意の医者が居りますから、其処《そこ》までいらしつて下さいまし。唯今俥を申附けました」
「何の、そんなに騒ぐほどの事は無いです」
「あれ、お殆《あぶな》うございますよ。さうして大相召上つてゐらつしやるやうですから、ともかくもお俥でお
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