一を御承知の?」
「おお、間貫一、旧友でした」
「私《わたくし》は鴫沢《しぎさわ》の宮でございます」
「何、鴫沢……鴫沢の……宮と有仰《おつしや》る……?」
「はい、間の居りました宅の鴫沢」
「おお、宮さん!」
奇遇に驚かされたる彼の酔《ゑひ》は頓《とみ》に半《なかば》は消えて、せめて昔の俤《おもかげ》を認むるや、とその人を打眺《うちなが》むるより外はあらず。
「お久しぶりで御座いました」
宮は懽《よろこ》び勇みて犇《ひし》と寄りぬ。
今は美《うつくし》き俥《くるま》の主ならず、路傍の酔客ならず名宣合《なのりあ》へるかれとこれとの思は如何《いかに》。間貫一が鴫沢の家に在りし日は、彼の兄の如く友として善かりし人、彼の身の如く契りて怜《いとし》かりし人にあらずや。その日の彼等は又|同胞《はらから》にも得べからざる親《したしみ》を以《も》て、膝《ひざ》をも交《まじ》へ心をも語りしにあらずや。その日の彼等は多少の転変を覚悟せし一生の中に、今日の奇遇を算《かぞ》へざりしなり。よしさりとも、一《ひと》たび同胞《はらから》と睦合《むつみあ》へりし身の、弊衣《へいい》を飄《ひるがへ》して道に酔《
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