却《さんきやく》して湘水《しようすい》平に桂樹《けいじゆ》を※[#「※」は「石+欠」、288−10]却《しやくきやく》して月|更《さら》に明《あきらか》ならんを、丈夫《じようふ》志有《こころざしあ》りて……」
と唱《うた》ひ出《い》づる時、一隊の近衛騎兵《このえきへい》は南頭《みなみがしら》に馬を疾《はや》めて、真一文字《まいちもんじ》に行手を横断するに会ひければ、彼は鉄鞭《てつべん》を植《た》てて、舞立つ砂煙《すなけむり》の中に魁《さきがけ》の花を装《よそほ》へる健児の参差《しんさ》として推行《おしゆ》く後影《うしろかげ》をば、壮《さかん》なる哉《かな》と謂《いは》まほしげに看送《みおく》りて、
「我《われ》四方《しほう》に遊びて意《こころ》を得ず、陽狂《ようきよう》して薬を施す成都の市《し》」
と漫《そぞろ》にその詩の首《はじめ》をば小声《こごゑ》朗《ほがらか》に吟じゐたり。さては往来《ゆきき》の遑《いとまな》き目も皆|牽《ひか》れて、この節季の修羅場《しゆらば》を独《ひとり》天下《てんか》に吃《くら》ひ酔《ゑ》へるは、何者の暢気《のんき》か、自棄《やけ》か、豪傑か、悟《さとり
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