」、288−2]《およ》びぬ。打見《うちみ》れば面目《めんもく》爽《さはやか》に、稍傲《ややおご》れる色有れど峻《さかし》くはあらず、しかも今陶々然として酒興を発し、春の日長の野辺《のべ》を辿《たど》るらんやうに、西筋の横町をこの大路に出《い》で来《きた》らんとす。
「瓢《ひよう》空《むなし》く夜《よ》は静《しづか》にして高楼に上《のぼ》り、酒を買ひ、簾《れん》を巻き、月を邀《むか》へて酔《ゑ》ひ、酔中《すいちゆう》剣《けん》を払へば光《ひかり》月《つき》を射る」
彼は節《ふし》をかしく微吟を放ちて、行く行くかつ楽むに似たり。打晴れたる空は瑠璃色《るりいろ》に夕栄《ゆふば》えて、俄《にはか》に冴《さ》え勝《まさ》る※[#「※」は「風+(魃−鬼)」、288−8]《こがらし》の目口に沁《し》みて磨錻《とぎはり》を打つらんやうなるに、烈火の如き酔顔を差付けては太息嘘《ふといきふ》いて、右に一歩左に一歩と※[#「※」は「足+禹」、288−9]《よろめ》きつつ、
「往々《おうおう》悲歌《ひか》して独《ひと》り流涕《りゆうてい》す、君山《くんざん》を※[#「※」は「戔+りっとう」、288−10]
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