《ほのめか》したる述懐の為に稍《やや》動されぬ。
「お話を聞いて見ると、貴方が今日《こんにち》の境遇になられたに就いては、余程深い御様子が有るやう、どう云ふのですか、悉《くはし》く聞《きか》して下さいませんか」
「極|愚《ぐ》な話で、到底お聞せ申されるやうな者ではないのです。又自分もこの事は他《ひと》には語るまい、と堅く誓つてゐるのでありますから、どうも申上げられません。究竟《つまり》或事に就いて或者に欺かれたのでございます」
「はあ、それではお話はそれで措《お》きませう。で、貴方もあんな家業は真人間の為べき事ではない、と十分承知してゐらるる、父などは決して愧《は》づべき事ではない、と謂つて剛情を張り通した。実に浅ましい事だと思ふから、或時は不如《いつそ》父の前で死んで見せて、最後の意見を為るより外は無い、と決心したことも有つたのです。父は飽くまで聴かん、私も飽くまで棄てては措《お》かん精神、どんな事をしても是非改心させる覚悟で居つたところ、今度の災難で父を失つた、残念なのは、改心せずに死んでくれたのだ、これが一生の遺憾《いかん》で。一時に両親《ふたおや》に別れて、死目にも逢《あ》はず
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