に、失せし夫婦の弔ふ者もあらで闇路《やみぢ》の奥に打棄てられたるを悲く、あはれ猶《なほ》少時《しばし》留らずやと、いと迫《せ》めて乞ひ縋《すが》ると覚ゆるに、行くにも忍びず、又立還りて積みたる土に息《いこ》へり。
 実《げ》に彼も家の内に居て、遺骸《なきがら》の前に限知られず思ひ乱れんより、ここには亡き人の傍《そば》にも近く、遺言に似たる或る消息をも得るらん想《おもひ》して、立てたる杖に重き頭《かしら》を支へて、夫婦が地下に齎《もたら》せし念々を冥捜《めいそう》したり。やがて彼は何の得るところや有りけん、繁《しげ》き涙は滂沱《はらはら》と頬《ほほ》を伝ひて零《こぼ》れぬ。
 夜陰に轟《とどろ》く車ありて、一散に飛《とば》し来《きた》りけるが、焼場《やけば》の際《きは》に止《とどま》りて、翩《ひらり》と下立《おりた》ちし人は、直《ただ》ちに鰐淵が跡の前に尋ね行きて歩《あゆみ》を住《とど》めたり。
 焼瓦《やけがはら》の踏破《ふみしだ》かるる音に面《おもて》を擡《もた》げたる貫一は、件《くだん》の人影の近く進来《すすみく》るをば、誰ならんと認むる間《ひま》も無く、
「間さんですか」
「おお
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