空《むなし》く燼余《じんよ》の断骨に相見《あひみ》て、弔ふ言《ことば》だにあらざらんとは、貫一の遽《にはか》にその真《まこと》をば真とし能《あた》はざるところなりき。人は皆死ぬべきものと人は皆知れるなり。されどもその常に相見る人の死ぬべきを思ふ能はず。貫一はこの五年間の家族を迫《せ》めての一人も余さず、家倉と共に焚尽《やきつく》されて一夜の中に儚《はかな》くなり了《をは》れるに会ひては、おのれが懐裡《ふところ》の物の故無《ゆゑな》く消失せにけんやうにも頼み難く覚えて、かくては我身の上の今宵|如何《いか》に成りなんをも料《はか》られざるをと、無常の愁は頻《しきり》に腸《はらわた》に沁《し》むなりけり。
 住むべき家の痕跡《あとかた》も無く焼失せたりと謂《い》ふだに、見果てぬ夢の如し、まして併《あは》せて頼めし主《あるじ》夫婦を喪《うしな》へるをや、音容《おんよう》幻《まぼろし》を去らずして、ほとほと幽明の界《さかひ》を弁ぜず、剰《あまつさ》へ久く病院の乾燥せる生活に困《こう》じて、この家を懐《おも》ふこと切なりければ、追慕の情は極《きはま》りて迷執し、迫《せ》めては得るところもありやと、
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