て焦壊《こげくづ》れたる人骨を掘出《ほりいだ》せり。酔《ゑ》ひて遁惑《にげまど》ひし故《ゆゑ》か、貪《むさぼ》りて身を忘れし故か、とにもかくにも主夫婦《あるじふうふ》はこの火の為に落命せしなり。家屋も土蔵も一夜の烟《けふり》となりて、鰐淵の跡とては赤土と灰との外に覓《もと》むべきものもあらず、風吹迷ふ長烟短焔《ちようえんたんえん》の紛糾する処に、独《ひと》り無事の形を留めたるは、主が居間に備へ付けたりし金庫のみ。
別居せる直道《ただみち》は旅行中にて未《いま》だ還《かへ》らず、貫一はあだかもお峯の死体の出でし時病院より駈着《かけつ》けたり。彼は三日の後には退院すべき手筈《てはず》なりければ、今は全く癒《い》えて務を執るをも妨げざれど、事の極《きは》めて不慮なると、急激なると、瑣小《さしよう》ならざるとに心惑《こころまどひ》のみせられて、病後の身を以《も》てこれに当らんはいと苦《くるし》かりけるを、尽瘁《じんすい》して万端を処理しつつ、ひたすら直道の帰京を待てり。
枕をも得挙《えあ》げざりし病人の今かく健《すこやか》に起きて、常に来ては親く慰められし人の頑《かたくな》にも強かりしを、
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