特《こと》に彼等をのみ照すやうに感ずるなり。

     第 五 章

 或日|箕輪《みのわ》の内儀は思も懸けず訪来《とひきた》りぬ。その娘のお俊と宮とは学校|朋輩《ほうばい》にて常に往来《ゆきき》したりけれども、未《いま》だ家《うち》と家との交際はあらざるなり。彼等の通学せし頃さへ親々は互に識《し》らで過ぎたりしに、今は二人の往来《おうらい》も漸《やうや》く踈《うと》くなりけるに及びて、俄《にはか》にその母の来《きた》れるは、如何《いか》なる故《ゆゑ》にか、と宮も両親《ふたおや》も怪《あやし》き事に念《おも》へり。
 凡《およ》そ三時間の後彼は帰行《かへりゆ》きぬ。
 先に怪みし家内は彼の来りしよりもその用事の更に思懸《おもひが》けざるに驚けり。貫一は不在なりしかばこの珍《めづらし》き客来《きやくらい》のありしを知らず、宮もまた敢《あへ》て告げずして、二日と過ぎ、三日と過ぎぬ。その日より宮は少《すこし》く食して、多く眠らずなりぬ。貫一は知らず、宮はいよいよ告げんとは為《せ》ざりき。この間に両親《ふたおや》は幾度《いくたび》と無く談合しては、その事を決しかねてゐたり。
 彼の陰に在りて
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