《あひまじは》り、相争《あひあらそ》ひ、相勢《あひきほ》ひて、力の限を互に奮《ふる》ふをば、妙《いみじ》くも為《し》たりとや、漫《そぞろ》笑《ゑみ》を洩《もら》せる顔色《がんしよく》はこの世に匹《たぐ》ふべきものありとも知らず。
 風の暴頻《あれしき》る響動《どよみ》に紛れて、寝耳にこれを聞着《ききつく》る者も無かりければ、誰一人|出《いで》て噪《さわ》がざる間に、火は烈々《めらめら》と下屋《げや》に延《し》きて、厨《くりや》の燃立つ底より一声|叫喚《きようかん》せるは誰《たれ》、狂女は※[#「※」は「口+喜」、273−16]々《きき》として高く笑ひぬ。

     (七) の 二

 人々出合ひて打騒《うちさわ》ぐ比《ころほひ》には、火元の建物の大半は烈火となりて、土蔵の窓々より焔《ほのほ》を出《いだ》し、はや如何《いか》にとも為んやうあらざるなり。さしもの強風《ごうふう》なりしかど、消防|力《つと》めたりしに拠《よ》りて、三十幾戸を焼きしのみにて、午前二時に※[#「※」は「しんにょう+台」、274−5]《およ》びて鎮火するを得たり。雑踏の裏《うち》より怪き奴は早くも拘引せられしと伝
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