」
狂女は苦々しげに頭《かしら》を掉《ふ》りて、
「お前さんの云ふことは皆|妄《うそ》だ。その手で雅之を瞞《だま》したのだらう。それ、それ見なさい、親孝行の、正直者の雅之を瞞着《だまくらか》して、散々金を取つた上に懲役に遣つたに相違無いと云ふ一札《いつさつ》をこの通り入れたぢやないか、これでも未《ま》だ※[#「※」は「森」のように「白」が3つ、266−2]《しらじら》しい顔をしてゐるのか」
打披《うちひろ》げたりし油紙を取りて直行の目先へ突付くれば、何を包みし移香《うつりが》にや、胸悪き一種の腥気《せいき》ありて夥《おびただし》く鼻を撲《う》ちぬ。直行は猶《なほ》も逆はで已《や》む無く面《おもて》を背《そむ》けたるを、狂女は目を※[#「※」は「目+登」、266−4]《みは》りつつ雀躍《こをどり》して、
「おおおお、あれあれ! これは嬉《うれし》い、自然とお前さんの首が段々細くなつて来る。ああ、それそれ、今にもう落ちる」
地には落さじとやうに慌《あわ》て※[#「※」は「りっしんべん+草」、266−8]《ふため》き、油紙もて承けんと為《せ》る、その利腕《ききうで》をやにはに捉《とら》
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