て置きまする、これに住所も誌《しる》してあります――貴方は失礼ながらやはり鰐淵《わにぶち》さんの御親戚ででも?」
「はい、親戚ではございませんが、鰐淵さんとは父が極御懇意に致してをりますので、それに宅がこの近所でございますもので、ちよくちよくお見舞に上つてはお手伝を致してをります」
「はは、さやうで。手前は五年ほど掛違うて間とは会ひませんので、どうか去年あたり嫁を娶《もら》うたと聞きましたが、如何《いかが》いたしましたな」
彼はこの美き看病人の素性知らまほしさに、あらぬ問をも設けたるなり。
「さやうな事はついに存じませんですが」
「はて、さうとばかり思うてをりましたに」
容儀《かたち》人の娘とは見えず、妻とも見えず、しかも絢粲《きらきら》しう装飾《よそほひかざ》れる様は色を売る儔《たぐひ》にやと疑はれざるにはあらねど、言辞《ものごし》行儀の端々《はしはし》自《おのづか》らさにもあらざる、畢竟《ひつきよう》これ何者と、鴫沢は容易にその一斑《いつぱん》をも推《すい》し得ざるなりけり。されども、懇意と謂ふも、手伝と謂ふも、皆|詐《いつはり》ならんとは想ひぬ。正《ただし》き筋の知辺《しるべ
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