お懸け遊ばしませんやうに。この熱も直《ぢき》に除《と》れまするさうでございますから、又改めてお出《いで》を願ひたう存じます。今日《こんにち》は私御名刺を戴《いただ》いて置きまして、お軽快《こころよく》なり次第私から悉《くはし》くお話を致しますでございます」
「はあ、それはそれは」
「実は、何でございました。昨日もお見舞にお出で下すつたお方に変な事を申掛けまして、何も病気の事で為方《しかた》もございませんけれど、私弱りきりましたのでございます。今日《こんにち》は又|如何《いかが》致したのでございますか、昨日とは全《まる》で反対であの通り黙りきつてをりますのですが、却つて無闇《むやみ》なことを申されるよりは始末が宜《よろし》いでございます」
 かくても始末は善しと謂ふかと、翁《をぢ》は打蹙《うちひそ》むべきを強《し》ひて易《か》へたるやうの笑《ゑみ》を洩《もら》せば、満枝はその言了《いひをは》せしを喜べるやうに笑ひぬ。彼は婆を呼びて湯を易へ、更に熱き茶を薦《すす》めて、再び客を席に着かしめぬ。
「さう云ふ訳では話も解りかねる。では又上る事に致しませう。手前は鴫沢隆三と申して――名刺を差上げ
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