か。とにかく鴫沢の翁《をぢ》に対してかう為たものではなからうと思ふがどうであらうの。成程お前さんの方にも言分はあらう、それも聞きに来た。私の方にも少《すこし》く言分の無いではない。それも聞かせたい。然し、かうしてわざわざ尋ねて来たものであるから、此方《こちら》では既に折れて出てゐるのだ。さうしてお前さんに会うて話と謂ふは、決《けつ》して身勝手な事を言ひに来たぢやない、やはり其方《そちら》の身の上に就いて善かれと計ひたい老婆心切《ろうばしんせつ》。私の方ではその当時に在つてもお前さんを棄てた覚は無し、又|今日《こんにち》も五年前も同じ考量《かんがへ》で居るのだ。それを、まあ、若い人の血気と謂ふのであらう。唯一図に思ひ込んで誤解されたのか、私は如何にも残念でならん。今日《こんにち》までも誤解されてゐるのは愈《いよい》よ心外だで、お前さんの住所の知れ次第早速出掛けて来たのだ。凡《およ》そ此方《こちら》の了簡《りようけん》を誤解されてゐるほど心苦い事は無い。人の為に謀《はか》つて、さうして僅《わづか》の行違《ゆきちがひ》から恨まれる、恩に被《き》せうとて謀つたではないが、恨まれやうとは誰《たれ
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