と寐返《ねがへ》りて、椅子を置きたる方《かた》に向直り、
「どうぞ此方《こちら》へ」
この心を暁《さと》れる満枝は、飽くまで憎き事為るよと、持てるハンカチイフにベッドを打ちて、かくまでに遇《あつか》はれながら、なほこの人を慕はでは已《や》まぬ我身かと、効《かひ》無くも余に軽く弄《もてあそ》ばるるを可愧《はづかし》うて佇《たたず》みたり。されども貫一は直《すぐ》に席を移さざる満枝の為に、再び言《ことば》を費さんとも為《せ》ざりけり。
気嵩《きがさ》なる彼は胸に余して、聞えよがしに、
「※[#「※」は「口+矣」、236−3]《ああ》、貴方には軽蔑《けいべつ》されてゐる事を知りながら、何為《なぜ》私《わたくし》腹を立てることが出来ないのでせう。実に貴方は!」
満枝は彼の枕を捉《とら》へて顫《ふる》ひしが、貫一の寂然《せきぜん》として眼《まなこ》を閉ぢたるに益《ますます》苛《いらだ》ちて、
「余《あんま》り酷《ひど》うございますよ。間さん、何とか有仰《おつしや》つて下さいましな」
彼は堪へざらんやうに苦《にが》りたる口元を引歪《ひきゆが》めて、
「別に言ふ事はありません。第一貴方のお見
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