舞下さるのは難有《ありがた》迷惑で……」
「何と有仰《おつしや》います!」
「以来はお見舞にお出で下さるのを御辞退します」
「貴方、何と……!!」
満枝は眉《まゆ》を昂《あ》げて詰寄せたり。貫一は仰ぎて眼《まなこ》を塞《ふた》ぎぬ。
素《もと》より彼の無愛相なるを満枝は知れり。彼の無愛相の己《おのれ》に対しては更に甚《はなはだし》きを加ふるをも善く知れり。満枝が手管《てくだ》は、今その外《おもて》に顕《あらは》せるやうに決《け》して内に怺《こら》へかねたるにはあらず、かくしてその人と諍《いさか》ふも、また※[#「※」は「りっしんべん+(篋−竹)」、236−15]《かな》はざる恋の内に聊《いささ》か楽む道なるを思へるなり。涙|微紅《ほのあか》めたる※[#「※」は「目+匡」、236−15]《まぶた》に耀《かがや》きて、いつか宿せる暁《あかつき》の葩《はなびら》に露の津々《しとど》なる。
「お内にも御病人の在るのに、早く帰つて上げたが可いぢやありませんか。私《わたくし》も貴方に度々《たびたび》来て戴くのは甚《はなは》だ迷惑なのですから」
「御迷惑は始から存じてをります」
「いいや、未だ外
前へ
次へ
全708ページ中339ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
尾崎 紅葉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング