けれど、何の廉《かど》もあらむに足近く訪はるるを心憂く思ふ余に、一度ならず満枝に向ひて言ひし事もありけれど、見舞といふを陽《おもて》にして訪ひ来るなれば、理として好意を拒絶すべきにあらず。さは謂《い》へ、こは情《なさけ》の掛※[#「※」は「(箆−竹−比)/民」、233−17]《かけわな》と知れば、又甘んじて受くべきにもあらず、しかのみならで、彼は素より満枝の為人《ひととなり》を悪《にく》みて、その貌《かたち》の美きを見ず、その思切《おもひせつ》なるを汲まんともせざるに、猶《なほ》かつ主《ぬし》ある身の謬《あやま》りて仇名《あだな》もや立たばなど気遣《きづか》はるるに就けて、貫一は彼の入来《いりく》るに会へば、冷き汗の湧出《わきい》づるとともに、創所《きずしよ》の遽《にはか》に疼《うづ》き立ちて、唯異《ただあやし》くも己《おのれ》なる者の全く痺《しび》らさるるに似たるを、吾ながら心弱しと尤《とが》むれども効《かひ》無かりけり。実《げ》に彼は日頃この煩《わづらひ》を逃れん為に、努めてこの敵を避けてぞ過せし。今彼の身は第二医院の一室に密封せられて、しかも隠るる所無きベッドの上に横《よこた》は
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