れば、一日一夜を為《な》す事も無く、ベッドの上に静養を勉《つと》めざるべからざる病院の無聊《ぶりよう》をば、殆《ほとん》ど生きながら葬られたらんやうに倦《う》み困《こう》じつつ、彼は更にこの病と相関する如く、関せざる如く併発したる別様の苦悩の為に侵さるるなりき。
主治医も、助手も、看護婦も、附添婆《つきそひばば》も、受附も、小使も、乃至《ないし》患者の幾人も、皆目を側《そば》めて彼と最も密なる関係あるべきを疑はざるまでに、満枝の頻繁《しげしげ》病《やまひ》を訪ひ来るなり。三月にわたる久きをかの美き姿の絶えず出入《しゆつにゆう》するなれば、噂《うはさ》は自《おのづ》から院内に播《ひろま》りて、博士の某《ぼう》さへ終《つひ》に唆《そそのか》されて、垣間見《かいまみ》の歩をここに枉《ま》げられしとぞ伝へ侍《はべ》る。始の程は何者の美形《びけい》とも得知れざりしを、医員の中に例の困《くるし》められしがありて、名著《なうて》の美人《びじ》クリイムと洩《もら》せしより、いとど人の耳を驚かし、目を悦《よろこば》す種とはなりて、貫一が浮名もこれに伴ひて唱はれけり。
さりとは彼の暁《さと》るべき由無
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