した、さぞお困りでしたらう」
「何だか知らんが、むちやくちやに寒かつた」
 宮は楽椅子を夫に勧めて、躬《みづから》は煖炉《ストオブ》の薪《たきぎ》を※[#「※」は「火+(竣−立)」、217−13]《く》べたり。今の今まで貫一が事を思窮《おもひつ》めたりし心には、夫なる唯継にかく事《つか》ふるも、なかなか道ならぬやうにて屑《いさぎよ》からず覚ゆるなり。窓の外に降る雪、風に乱るる雪、梢《こずゑ》に宿れる雪、庭に布《し》く雪、見ゆる限の白妙《しらたへ》は、我身に積める人の怨《うらみ》の丈《たけ》かとも思ふに、かくてあることの疚《やま》しさ、切なさは、脂《あぶら》を搾《しぼ》らるるやうにも忍び難かり。されども、この美人の前にこの雪を得たる夫の得意は限無くて、その脚《あし》を八文字に踏展《ふみはだ》け、漸《やうや》く煖まれる頤《おとがひ》を突反《つきそら》して、
「ああ、降る降る、面白い。かう云ふ日は寄鍋《よせなべ》で飲むんだね。寄鍋を取つて貰《もら》はう、寄鍋が好い。それから珈琲《カフヒイ》を一つ拵《こしら》へてくれ、コニャックを些《ち》と余計に入れて」
 宮の行かんとするを、
「お前、行かん
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