晩《おそ》かりしを、遣方《やるかた》も無く悔ゆるなりけり。
 この寒き日をこの煖《あたたか》き室《しつ》に、この焦るる身をこの意中の人に並べて、この誠をもてこの恋しさを語らば如何《いか》に、と思到れる時、宮は殆《ほとん》ど裂けぬべく胸を苦く覚えて、今の待つ身は待たざる人を待つ身なる、その口惜《くちを》しさを悶《もだ》えては、在るにも在られぬ椅子を離れて、歩み寄りたる窓の外面《そとも》を何心無く打見遣《うちみや》れば、いつしか雪の降出でて、薄白く庭に敷けるなり。一月十七日なる感はいと劇《はげし》く動きて、宮は降頻《ふりしき》る雪に或言《あることば》を聴くが如く佇《たたず》めり。折から唯継は還来《かへりきた》りぬ。静に啓《あ》けたる闥《ドア》の響は絶《したたか》に物思へる宮の耳には入《い》らざりき。氷の如く冷徹《ひえわた》りたる手をわりなく懐《ふところ》に差入れらるるに驚き、咄嗟《あなや》と見向かんとすれば、後より緊《しか》と抱《かか》へられたれど、夫の常に飭《たしな》める香水の薫《かをり》は隠るべくもあらず。
「おや、お帰来《かへり》でございましたか」
「寒かつたよ」
「大相降つて参りま
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