その手段は如何《いか》にあらうとも」
父は騒がず、笑《ゑみ》を含みて赤き髭《ひげ》を弄《まさぐ》りたり。
「卑劣と言れやうが、陋《きたな》いと言れやうが、思ふさま遺趣返をした奴等は目的を達してさぞ満足してをるでせう。それを掴殺《つかみころ》しても遣りたいほど悔《くやし》いのは此方《こつち》ばかり。
阿父《おとつ》さんの営業の主意も、彼等の為方と少しも違はんぢやありませんか。間の事に就いて無念だと貴方《あなた》がお思ひなさるなら、貴方から金を借りて苦められる者は、やはり貴方を恨まずにはゐませんよ」
又しても感じ入りたるは彼の母なり。かくては如何なる言《ことば》をもて夫はこれに答へんとすらん、我はこの理《ことわり》の覿面《てきめん》当然なるに口を開かんやうも無きにと、心|慌《あわ》てつつ夫の気色を密《ひそか》に窺《うかが》ひたり。彼は自若として、却《かへ》つてその子の善く論ずるを心に愛《め》づらんやうの面色《おももち》にて、転《うた》た微笑を弄《ろう》するのみ。されども妻は能《よ》く知れり、彼の微笑を弄するは、必ずしも、人のこれを弄するにあらざる時に於いて屡《しばしば》するを。彼は今
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