て貸しはせんぞ。無抵当で貸すぢやから利が高い、それを承知で皆借るんじや。それが何で不正か、何で汚《けがらはし》いか。利が高うて不当と思ふなら、始から借らんが可え、そんな高利を借りても急を拯《すく》はにや措《おか》れんくらゐの困難が様々にある今の社会じや、高利貸を不正と謂ふなら、その不正の高利貸を作つた社会が不正なんじや。必要の上から借る者があるで、貸す者がある。なんぼ貸したうても借る者が無けりや、我々の家業は成立ちは為ん。その必要を見込んで仕事を為るが則《すなは》ち営業の魂《たましひ》なんじや。
 財《かね》といふものは誰でも愛して、皆獲やうと念《おも》うとる、獲たら離すまいと為《し》とる、のう。その財を人より多く持たうと云ふぢやもの、尋常一様の手段で行くものではない。合意の上で貸借して、それで儲くるのが不正なら、総《すべ》ての商業は皆不正でないか。学者の目からは、金儲《かねまうけ》する者は皆不正な事をしとるんじや」
 太《いた》くもこの弁論に感じたる彼の妻は、屡《しばし》ば直道の顔を偸視《ぬすみみ》て、あはれ彼が理窟《りくつ》もこれが為に挫《くじ》けて、気遣《きづか》ひたりし口論も無
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