て了うてからに手を退《ひ》くやうな了簡《りようけん》であつたら、国は忽《たちま》ち亡《ほろぶ》るじや――社会の事業は発達せんじや。さうして国中《こくちゆう》若隠居ばかりになつて了うたと為れば、お前どうするか、あ。慾にきりの無いのが国民の生命なんじや。
俺にそんなに財《かね》を拵《こしら》へてどうするか、とお前は不審するじやね。俺はどうも為《せ》ん、財は余計にあるだけ愉快なんじや。究竟《つまり》財を拵へるが極《きは》めて面白いんじや。お前の学問するのが面白い如く、俺は財の出来るが面白いんじや。お前に本を読むのを好《え》え加減に為《せ》い、一人前の学問が有つたらその上望む必要は有るまいと言うたら、お前何と答へる、あ。
お前は能《よ》うこの家業を不正ぢやの、汚《けがらはし》いのと言ふけど、財を儲《まう》くるに君子の道を行うてゆく商売が何処《どこ》に在るか。我々が高利の金を貸す、如何《いか》にも高利じや、何為《なぜ》高利か、可《え》えか、無抵当じや、そりや。借る方に無抵当といふ便利を与ふるから、その便利に対する報酬として利が高いのぢやらう。それで我々は決して利の高い金を安いと詐《いつは》つ
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