ど、一処《いつしよ》に居たらさぞ好からうとは……」
「それは、私は猶《なほ》の事です。こんな内に居るのは可厭《いや》だ、別居して独《ひとり》で遣る、と我儘《わがまま》を言つて、どうなりかうなり自分で暮して行けるのも、それまでに教育して貰つたのは誰《たれ》のお陰かと謂へば、皆《みんな》親の恩。それもこれも知つてゐながら、阿父《おとつ》さんを踏付にしたやうな行《おこなひ》を為るのは、阿母《おつか》さん能々《よくよく》の事だと思つて下さい。私は親に悖《さから》ふのぢやない、阿父さんと一処に居るのを嫌《きら》ふのぢやないが、私は金貸などと云ふ賤《いやし》い家業が大嫌《だいきらひ》なのです。人を悩《なや》めて己《おのれ》を肥《こや》す――浅ましい家業です!」
身を顫《ふる》はして彼は涙に掻昏《かきく》れたり。母は居久《いたたま》らぬまでに惑へるなり。
「親を過《すご》すほどの芸も無くて、生意気な事ばかり言つて実は面目《めんぼく》も無いのです。然し不自由を辛抱してさへ下されば、両親ぐらゐに乾《ひもじ》い思はきつと為《さ》せませんから、破屋《あばらや》でも可いから親子三人一所に暮して、人に後指を差
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