護謨《ゴム》のカラ、カフ、鼠色《ねずみいろ》の紋繻子《もんじゆす》の頸飾《えりかざり》したり。妻は得々《いそいそ》起ちて、その外套を柱の折釘《をりくぎ》に懸けつ。
「どうも取んだ事で、阿父《おとつ》さんの様子はどんな? 今朝新聞を見ると愕《おどろ》いて飛んで来たのです。容体《ようだい》はどうです」
彼は時儀を叙《の》ぶるに※[#「※」は「しんにょう+台」、195−9]《およ》ばずして忙《せは》しげにかく問出《とひい》でぬ。
「ああ新聞で、さうだつたかい。なあに阿父さんはどうも作《なさ》りはしないわね」
「はあ? 坂町で大怪我《おほけが》を為《なす》つて、病院へ入つたと云ふのは?」
「あれは間《はざま》さ。阿父さんだとお思ひなの? 可厭《いや》だね、どうしたと云ふのだらう」
「いや、さうですか。でも、新聞には歴然《ちやん》とさう出てゐましたよ」
「それぢやその新聞が違つてゐるのだよ。阿父さんは先之《さつき》病院へ見舞にお出掛だから、間も無くお帰来《かへり》だらう。まあ寛々《ゆつくり》してお在《いで》な」
かくと聞ける直道は余《あまり》の不意に拍子抜して、喜びも得為《えせ》ず唖然《あぜ
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