を、利腕捉《ききうでと》つて、
「黙れ!」と捩伏《ねぢふ》せ、
「さあ、遊佐、その中に君の証書が在るに違無いから、早く其奴《そいつ》を取つて了ひ給へ」
これを聞きたる遊佐は色を変へぬ。風早も事の余《あまり》に暴なるを快《こころよ》しと為ざるなりき。貫一は駭《おどろ》きて、撥返《はねかへ》さんと右に左に身を揉むを、蹈跨《ふんまたが》りて捩揚《ねぢあ》げ捩揚げ、蒲田は声を励して、
「この期《ご》に及んで! 躊躇《ちゆうちよ》するところでないよ。早く、早く、早く! 風早、何を考へとる。さあ、遊佐、ええ、何事も僕が引受けたから、かまはず遣り給へ。証書を取つて了へば、後は細工はりうりう僕が心得てゐるから、早く探したまへと言ふに」
手を出しかねたる二人を睨廻《ねめまは》して、蒲田はなかなか下に貫一の悶《もだ》ゆるにも劣らず、独《ひと》り業《ごう》を沸《にや》して、効無《かひな》き地鞴《ぢただら》を踏みてぞゐたる。
風「それは余り遣過ぎる、善《よ》くない、善くない」
「善《い》いも悪いもあるものか、僕が引受けたからかまはんよ。遊佐、君の事ぢやないか、何を※[#「※」は「りっしんべん+(夢−夕)/
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