目」、173−9]然《ぼんやり》してゐるのだ」
彼はほとほと慄《をのの》きて、寧《むし》ろ蒲田が腕立《うでだて》の紳士にあるまじきを諌《いさ》めんとも思へるなり。腰弱き彼等の与《くみ》するに足らざるを憤れる蒲田は、宝の山に入《い》りながら手を空《むなし》うする無念さに、貫一が手も折れよとばかり捩上《ねぢあぐ》れば、
「ああ、待つた待つた。蒲田君、待つてくれ、何とか話を付けるから」
「ええ聒《やかまし》い。君等のやうな意気地無しはもう頼まん。僕が独《ひとり》で遣つて見せるから、後学の為に能く見て置き給へ」
かく言捨てて蒲田は片手して己《おのれ》の帯を解かんとすれば、時計の紐《ひも》の生憎《あやにく》に絡《からま》るを、躁《あせ》りに躁りて引放さんとす。
風「独《ひとり》でどうするのだよ」
彼はさすがに見かねて手を仮さんと寄り進みつ。
蒲「どうするものか、此奴《こいつ》を蹈縛《ふんじば》つて置いて、僕が証書を探すわ」
「まあ、余り穏《おだやか》でないから、それだけは思ひ止《とま》り給へ。今間も話を付けると言つたから」
「何か此奴《こいつ》の言ふ事が!」
間は苦《くるし》き声を搾《し
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