だい、君の目的は」
「唯|貨《かね》が欲いのです」
「で、その貨をどうする」
「つまらん事を! 貨はどうでもなるぢやありませんか。どうでもなる貨だから欲い、その欲い貨だから、かうして催促もするのです。さあ、遊佐さん、本当にどうして下さるのです」
風「まあ、これを一盃《いつぱい》飲んで、今日は機嫌《きげん》好く帰つてくれ給へ」
蒲「そら、お取次だ」
「私《わたくし》は酒は不可《いかん》のです」
蒲「折角差したものだ」
「全く不可のですから」
差付けらるるを推除《おしの》くる機《はずみ》に、コップは脆《もろ》くも蒲田の手を脱《すべ》れば、莨盆《たばこぼん》の火入《ひいれ》に抵《あた》りて発矢《はつし》と割れたり。
「何を為る!」
貫一も今は怺《こら》へかねて、
「どうしたと!」
やをら起たんと為るところを、蒲田が力に胸板《むないた》を衝《つか》れて、一耐《ひとたまり》もせず仰様《のけさま》に打僵《うちこ》けたり。蒲田はこの隙《ひま》に彼の手鞄《てかばん》を奪ひて、中なる書類を手信《てまかせ》に掴出《つかみだ》せば、狂気の如く駈寄《かけよ》る貫一、
「身分に障《さは》るぞ!」と組み付く
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