ね。我々から考へると、人情の忍ぶ可からざるを忍んで、経営|惨憺《さんたん》と努めるところは、何ぞ非常の目的があつて貨《かね》を殖《こしら》へるやうだがな、譬《たと》へば、軍用金を聚《あつ》めるとか、お家の宝を質請《しちうけ》するとか。単に己《おのれ》の慾を充さうばかりで、あんな思切つて残刻な仕事が出来るものではないと想ふのだ。許多《おほく》のガリガリ亡者《もうじや》は論外として、間貫一に於《おい》ては何ぞ目的が有るのだらう。こんな非常手段を遣るくらゐだから、必ず非常の目的が有つて存《そん》するのだらう」
秋の日は忽《たちま》ち黄昏《たそが》れて、稍《やや》早けれど燈《ともし》を入るるとともに、用意の酒肴《さけさかな》は順を逐《お》ひて運び出《いだ》されぬ。
「おつと、麦酒《ビイル》かい、頂戴《ちようだい》。鍋《なべ》は風早の方へ、煮方は宜《よろし》くお頼み申しますよ。うう、好い松茸《まつだけ》だ。京でなくてはかうは行かんよ――中が真白《ましろ》で、庖丁《ほうちよう》が軋《きし》むやうでなくては。今年は不作《はづれ》だね、瘠《や》せてゐて、虫が多い、あの雨が障《さは》つたのさ。間、どう
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