遊佐なり。
「ここで飲んぢや旨《うま》くないね。さうして形が付かなければ、何時《いつ》までだつて帰りはせんよ。酒が仕舞《しまひ》になつてこればかり遺《のこ》られたら猶《なほ》困る」
「宜《よろし》い、帰去《かへり》には僕が一所に引張つて好い処へ連れて行つて遣るから。ねえ、間、おい、間と言ふのに」
「はい」
「貴様、妻君有るのか。おお、風早!」
と彼は横手を拍《う》ちて不意に※[#「※」は「口+斗」、170−16]《さけ》べば、
「ええ、吃驚《びつくり》する、何だ」
「憶出《おもひだ》した。間の許婚《いひなづけ》はお宮、お宮」
「この頃はあれと一所かい。鬼の女房に天女だけれど、今日《こんにち》ぢや大きに日済《ひなし》などを貸してゐるかも知れん。ええ、貴様、そんな事を為《さ》しちや可かんよ。けれども高利貸《アイス》などは、これで却《かへ》つて女子《をんな》には温《やさし》いとね、間、さうかい。彼等の非義非道を働いて暴利を貪《むさぼ》る所以《ゆゑん》の者は、やはり旨いものを食ひ、好い女を自由にして、好きな栄耀《えよう》がして見たいと云ふ、唯それだけの目的より外に無いのだと謂ふが、さうなのか
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