と怪しむなりき。
遊「そんな筈《はず》は無い」
 貫一は彼等の騒ぐを尻目に挂《か》けて、
「九十円が元金《もときん》、これに加へた二十七円は天引の三割、これが高利《アイス》の定法《じようほう》です」
 音もせざれど遊佐が胆は潰《つぶ》れぬ。
「お……ど……ろ……いたね!」
 蒲田は物をも言はず件《くだん》の手形を二つに引裂き、遊佐も風早もこれはと見る間に、猶《なほ》も引裂き引裂き、引捩《ひきねぢ》りて間が目先に投遣《なげや》りたり。彼は騒げる色も無く、
「何を為《なさ》るのです」
「始末をして遣つたのだ」
「遊佐さん、それでは手形もお出し下さらんのですな」
 彼は間が非常手段を取らんとするよ、と心陰《こころひそか》に懼《おそれ》を作《な》して、
「いやさう云ふ訳ぢやない……」
 蒲田は※[#「※」は「にんべん+乞」、167−14]《きつ》と膝《ひざ》を前《すす》めて、
「いや、さう云ふ訳だ!」
 彼の鬼臉《こはもて》なるをいと稚《をさな》しと軽《かろ》しめたるやうに、間はわざと色を和《やはら》げて、
「手形の始末はそれで付いたか知りませんが、貴方《あなた》も折角中へ入つて下さるなら、も
前へ 次へ
全708ページ中235ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
尾崎 紅葉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング